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【中村内務部長着任】
―十九日朝横浜駅へ―
11月16日

本県内務部長に栄転した前高知県内務部長中村恒三郎氏は十九日午前九時三十分横浜駅着の列車で家族同伴着任した。 (写真は横浜駅頭にて新任内務部長と同夫人)
【晩秋のグランドに躍る制服の処女】
―盛んなりし
     県下女子中等学校体操大会―
11月17日

県中等学校体育連盟主催の女子部体操大会は、十九日午前九時から公園グランドで盛大に挙行、参加十七校四千余名のマスゲームの外、特に薙刀体操及び各種の新しい体育ダンス等に若き肉体の躍動は健康の秋を謳歌して溌剌た(ママ)ものであつた。 (写真は会場)

《解説》 1920〜30年代にかけて女性もスポーツに積極的に参加するようになった。その背景には国力に母性の健康が関与しているという考え方もあった。



【天皇陛下の御臨幸を仰ぎ
     光栄に輝やく軍艦『鈴谷』】
11月18−19日

世界に誇る帝国海軍の新威力二等巡洋艦『鈴谷』(八・五〇〇噸)の晴れの進水式は廿日午後三時、畏くも 天皇陛下の行幸を仰ぎ奉り、横須賀海軍工廠に於て厳かに挙行された。此日 天皇陛下には湯浅宮相、本庄侍従武官長以下を従へられ午後一時四十分皇礼砲轟く中を軍港に着御、鎮守府に御小憩の後末次長官御先導にて『君が代』奏楽裡に進水式場に臨御あらせられる。かくて大角海相進水命令書を朗読するや支柱安全装置等凡て取除かれ進水準備全く成れば、村田工廠長 玉座前に進み出でゝ銀斧一閃!支綱は見事切断せられて二百米の巨体はスルスルと五色のテープ靡かせて船台をすべり出す。此時起る「軍艦マーチ」の中に平和の天使七羽の白鳩は船首の久寿玉より羽音も高く飛出せば、十万の拝観者一万余の工廠従業員は万歳と拍手送り、天地もゆるぐばかりであつたが、此の間廿分御起立遊ばされたる陛下も御機嫌いと麗しく拝せられた。 (写真は玉座と晴れの『鈴谷』)
【街頭に進出した移動瓦斯局】
―お役所の露店商売大繁盛―
11月20日

段々と冬も近づいて来ましたが暖房のお支度は如何ですか、と瓦斯局では小さな屋台車にストーブやコンロを満載して街の奥さん、おかみさんに呼かけて居るが、夜は伊勢佐木町に出てアイロンやスキ焼鍋の実演をして毎晩三四十の申込を必ず受けてデパート等を尻目に見て居るが、廿二日の酉の市には肥後組の好意で場割を貰つてテキヤさんに混つて吏員さんの口上販売はお役所仕事としては上出来である。之れも年末新風景の一ツ。 (写真は真金町にて)
【神奈川県会開く】
―予算案よりは
      議長問題で緊張するの図―
11月21日

昭和十年度の神奈川県予算を付議する通常県会は、廿二日招集されて午前中は各派の協議会で暇を潰し、漸く午後二時から開会された。三木議長は議長席に就き議会の成立した旨を告げ直ちに知事を招き、横山知事は登壇して明十年度の予算案の大綱を説明して降壇すれば、議長は諸般の報告を終つて議案調査の為め一週間休会する旨を告げ直ちに散解(ママ)を宣した。本期は議長の改選問題を廻つて政友会内には一揉めある可く、従つて民政、中立、国同、無産何れもそれ相当の懸惹きがあるので開会当初から一段の緊張を示して居る。 (写真は横山知事の議案説明)



【『乗馬の宮さま』御台臨の下に
      『馬の戸塚』で大競技会】
―本県主催関東一府八県連合
          馬匹共進会終る―
11月22−23日

廿二日から戸塚馬場に於て催されてゐるこの共進会では「非常時」の声に断然人気ある名馬を網羅して、廿五日馬術競技大会を行つたが、「乗馬の宮様」北白川、竹田両宮殿下の御台臨を仰いで、参加名馬は遠く近畿四国方面等全国の乗馬倶楽部から選り抜きの名手百余名が、互に「今曲垣」の名を競つて高等馬術十数番終つて、オリムピツクに出場して世界馬術に其の名も高い騎兵学校教官今村少佐、西中尉等の模範馬術あり。次いで横山知事より日本産名馬として功績多かつた「峯成」号(遊佐大佐調教二十三才)の表彰を行つたが、廿六日は優秀馬審査の上発表賞品授与を行つた。 (写真は御台臨の北白川宮殿下と高障害飛び)

《解説》 有能な馬は国防上重視され、政府も乗馬団体の活発な活動を奨励した。戸塚競馬場は昭和8年(1933)に完成、のち汲沢に移転した。
【女学生も参加して中等学校射撃大会】
―対抗・個人共に三中優勝す―
11月24日

高工射撃クラブ主催第五回県下中等学校射撃大会は、六つ川町の在郷軍人射場に於て開催、参加男子部十二校で対抗一七〇点で三中、個人四一点で伊藤君(三中)優勝し、女子部唯一の参加校戸部高女では二四点で根本嬢優賞した。 (写真は女子の委托射撃)
【『勤王芸者』百人を集めて
     副官殿が非常時を吹込む】
―憲兵隊林中尉日本橋で―
11月25日

日本橋見番では廿五日午後一時から憲兵隊林副官並に横須賀より古田大佐の来浜を求めて新川町新川会館に於て『非常時と日本女性』に関する講演会を催したが、聴手は日本ばしのキレイどこが百人余り、なまめかしい女の香りで蒸せかへる中で、副官殿は平易な口調で目下のソ満国境の急迫や南洋統治領に対する世界の動向を説いて昭和十、十一年の危機を強調し、銃後の大和撫子の中より幾百人の勤皇芸妓『幾松』や間諜『X27号』出でよ!と非常時意識を吹込んだ。 (写真は非常時を聴く日本橋の姐さん達)

《解説》 幾松は幕末京都の芸妓で、幕府に追われていた木戸孝允を庇護した。間諜X27号とは同名の映画(1931年)の主人公の売春婦で、第一次世界大戦時にスパイとして活躍する、という設定だった。
【満州国商工会議所議員の産業視察】
11月26日

来朝中の満州国商工会議所議員一行は去月廿七日来浜し、県市関係者の案内で市内の産業を視察し、生糸検査所に至り係員の案内で検査情況を見た。 (写真は生糸検査所に於ける同議員と同所の検査操作)
【山は招くスキー気分】
―街頭に溢れ出た山岳趣味満喫、
            羽衣町所見―
11月27日

山容漸く変じて白衣の処女とならんとし、スキー便りボツボツ到らんとする今日、街頭にもスキー気分満溢し羽衣町のカジマ屋運道具店頭はロツグ、キヤビンに早変りし、スキー運道具充満と云ふ街のヒユツテを出現させて居る。 (写真は同店頭とスキーヤー)
【日本の舞踊美の研究に】
―米国一流のダンサー来朝す―
11月28日

今、米国ハリウツドで断然売出しの舞姫ポーラ・デ・カルド嬢(十八)は廿九日午後六時半横浜港入港の龍田丸で両親に伴はれて来朝した。父のカルド氏はベルギーのブラツセル大学舞踊科出身で、父子相携えて巴里に舞踊研究に赴く途中我が邦に立寄り、二週間の予定で日本舞踊美の研究をする相である。 (写真は甲板上のポーラ嬢)
【国産奨励の御思召 秩父宮様 
国産自動車工場御視察遊ばちる(ママ)】
11月29日


秩父宮殿下には国産御奨励の思召により三十日午後一時半東京御本邸御出発に相成り、横浜市神奈川区守屋町の日産自動車株式会社に御成り遊ばされ、同社製造に係る国産自動車ダツトサン号の工程を御視察の上畏くも御試乗相成り同社構内を御廻り遊ばされ、約一時間の後三時半御恙なく御帰館遊ばされた。 (写真は御試乗中の宮殿下)

《解説》 日産自動車横浜工場は昭和9年4月末までに完成し、前年に202台だったダットサンの生産台数はこの年1170台まで増加した。この後国産メーカーによる自動車生産台数は急激に伸びていった。
【『水産デー』に魚族の一大デモ行進】
―県・市水産会主催―
11月30日


県・市水産会並に各地水産会主催「水産バザー」は一日から四日間野沢屋六階に於て開催、各地水産会の出品の水産物の即売を行つてゐるが、期間中は魚に仮装した大行列が市内を宣伝して歩いてゐる。 (写真は伊勢佐木通の行列)